
養老孟司の“逆さメガネ”
著者:養老 孟司
出版:PHP研究所 (2003/8/2)
本を読む醍醐味の一つは、読んだ後、それまでとは違った視点から世界が見えることになることだと思います。
「逆さメガネ」は、人間の知覚や認知を調べる実験道具です。
特殊なメガネでこのメガネをかけると上下が逆転します。左右が逆転するメガネもあります。
不思議なことに人間は。しばらくの間、訓練をすると慣れて歩けるようになります。
人間の適応能力のすごさでありながら、逆に怖さなのかもしれません。
この本は、「バカの壁」や「唯脳論
」など、これまでの常識?に縛られることなく、独自の視点を繰り広げる養老孟司さんが「教育」をテーマに執筆された本です。
「教育」というテーマを取り巻く諸問題を広く議論するだけでなく、現代社会の仕組みに疑問を投げかけています。
「都市こそ進歩の象徴」、「ひとりひとりの心に個性的がある」、「科学であらゆることは予測できる」、「バリア・フリーの社会を」などなど当たり前のように語られている話は、本当にそうなのか?
都市化社会・脳化社会という逆さメガネがいかに社会に歪みをもたらしてきたのかがよくわかりました。
大人の都合ばかりが優先される社会だという指摘は、夢職人のような活動をしているととても共感させられます。
人間は刻々と変わっているのに、今の社会は「変わらない私」を前提にしているおかしさについて述べられているところは、正に目からウロコでした。
ところどころにある著者らしいブラックジョークは、思わず吹き出してしましました!(笑)
基本的な考え方はこれまで出版されてきた本に書かれている内容と同じですが、この本では東大で長く教鞭を取られてきた経験や現在の保育園で理事を務められている話もちりばめられており、著者の他の本にない一面が見え隠れしていました。
教育関係者のみならず楽しんで読める一冊です。




