2007年09月12日
「影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか」
別に欲しいと思ってもいなかったものを買ってしまったり、妙な話に載せられてしまったことってありますか?そんなことはなくても、なんだかわからないけど説得力のある人っていますよね?この本を書かれたチャルディーニさん(米)は、社会心理学の世界で知る人ぞ知る著名な先生です。街頭や個別の訪問販売、怪しげな宗教の寄付などで苦い思いを味わった経験から、セールスマンや広告主の世界に入り込み、その心理的なメカニズムを解明したというスゴイ研究者です。私は、この研究の至るまでの経緯がなんとも言えず好きです。(笑)
1991年に日本語の初版が出版されてから、長い間、たくさんの人に読まれてきた本です。今年は、日本心理学会第71回大会が東洋大学で開催されます。そこでは、この本の著者であるチャルディーニさんが招待講演をされることになっています!講演のテーマは、「環境保護行動を促す説得的コミュニケーション」です。ぜひ、興味・関心がある方はぜひ、どうぞ!
人の態度や行動を変化させる説得というのは、一定のメカニズムが存在します。@返報性、Aコミットメントと一貫性、B社会的証明、C好意、D権威、E希少性といった6つのメカニズムは、どれも思わず「なるほど!」と思わせるものばかり!この本をたくさんの営業マンの方に愛読されている理由もよくわかります。この本を出版された後にも、長く説得に関する研究を続けられています。どのように声をかければ献血する人は、増えるのか?、どのような看板を立てれば、ゴミは捨てられなくなるのか?実に面白い研究ばかりです。まだ、読まれていない方はぜひ、一読ください。社会心理学の入門書としても有意義な一冊です。
2007年08月25日
「思春期のこころ」
思春期は、それまで行動の主として家庭から段々と社会へ巣立っていく時期です。中学生ぐらいの子どもたちがちょうどそれくらいの時期に当たります。心も体にも顕著な変化があり、親が子どものことを理解しにくくなったと思うのもこの時期が多いようです。この本では、思春期における心理的な特徴について、包括的に述べられており、「いじめ」、「ひきこもり」、「少年犯罪」などの具体的な事象についても理解を深められる一冊です。専門書的な内容ですが、非常に読みやすく、心理学を特に知らなくても十分に楽しめます。
「少年事件は本当に凶悪化しているのか?」、「なぜ子どもたちはイライラするのか?」、「どこまで自主性に任せ、どこから介入すべきか?」どれも大変興味深い疑問です。すべての大人が通過してきた時期であるにもかかわらず、なかなか思春期の理解はむずかしいものです。その不安を煽るかのようにメディアでは、奇行ばかりが取り上げられています。でも、このような奇行は、誰しもが経験している思春期に特徴的な心理が絡み合って起こるものです。けして、一部の狂人が引き起こすものではなく、そのリスクというのは、どの子ども達にもあるということがよくわかります。でも、多くの場合、周囲の大人の適切な介入があればその深みにはまることなく、生きていくうえで必要な糧とすることができるのだと思いました。
テレビや新聞などで取り上げられるような事例ばかりを目にしているとなんだか少年犯罪が増え、凶悪化しているような印象を持ちますが、全く統計的な根拠のないことです。「犯罪について国際比較を見ると、成人についても青少年についても、日本は依然として暴力犯罪の最も少ない国の一つです。だから、『日本では、最近、青少年の暴力が問題になっている』と言うと、海外の研究者は一様にいぶかしい顔をします。彼らは、むしろ、なぜ日本は暴力犯罪が少ないかを知りたいと思っているからです。」(本文引用) 周囲の大人が思春期の時期の子ども達について、正しい認識を持っていることは、子どものみならず大人自身にとってもとても大切なことだと思います。気軽に読める一冊なのでぜひ、一読ください。
2007年08月09日
「信頼の構造―こころと社会の進化ゲーム」
人が社会的な存在であり、人と人との関係の中に生きているということは、誰しもが異論のないことです。その人との関係の中を生きていくうえで「信頼」は欠くことができないものであり、その重要性は誰しも認識していることだと思います。この本は、そんな当たり前のことを説教する本ではありません。「信頼」というものを社会心理学から科学的に探究している本です。山岸先生(北海道大学大学院教授)は、世界的に活躍している社会心理学者です。この本には、山岸先生の長きにわたる社会的ジレンマの日米比較研究の成果の詰まっています。先日、「爆笑問題のニッポンの教養」というテレビ番組でも研究室が紹介されていて驚きました。内容が専門的なものとなっているので、一般書としては、「社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで
「社会的ジレンマ」という言葉は、ご存じですか?人々が自分の利益だけを考えて行動すると社会的に望ましくない状態が生まれてしまうジレンマです。身の回りのことを振り返ってみると「環境問題」、「違法駐車」、「いじめ」など社会的なジレンマだらけですね。この社会的ジレンマの研究によく用いられる実験方法に「囚人のジレンマ」というものがあります。とってもおもしろくて、奧が深い内容なので、興味がある方はぜひ、調べてみてください。
信頼のない社会は、本当に生きにくい社会です。買い物もできなければ、ご飯も食べられない。様々な不信が次から次へと取りざたされる社会は、どんな社会なのかよくよく考えさせられます。多くの「不信」は個人の性格からくるものではなく、「状況」からやってくるものです。ぜひ、この本を通して、こころと社会の密接なつながりについて、科学してみてください。
2007年05月19日
「子ども社会の心理学―親友・悪友・いじめっ子」
子どもたちの行動を理解していくうえでその個人のパーソナリティを検討することは、とても大切なことですが、それだけでは全くもって不十分です。子どもたちは、子どもたちなりのひとつの社会に生きていることを十分に理解しておく必要があります。しかしながら、それは大人からはとても見えにくく、わかりにくいものでもあります。
2006年11月29日
「子どもの社会的発達」

子どもの社会的発達
著者:井上 健治/久保 ゆかり
出版:東京大学出版会 (1997/04)
子どもの成長に関する本は、様々にありますがこの本は、子どもの社会的な側面に焦点を当てている本です。
人は生まれたその瞬間から周囲の人々との関わりを通して、「心」も「体」も段々と成長を遂げていくわけですが、成長とともにその対人関係も大きく変化をしていきます。
小さい頃は、親や家族とのやり取りが一番多いわけですが、成長にするについれて仲間や教師、保育者など移り変わっていきます。
この本では、成長段階や対人関係の種類に応じて、発達していく子ども姿を詳細に描いています。
近年、何かと話題にされる「社会性」というものが順を追って展開していくことがよくわかります。
途中には、「『自己』や『他者』をどのように認識していくのか?」、「道徳性はどのように身につけていくのか?」、「『社会的事象』をどのように捉えていくのか?」などちょっと基礎から一歩出たテーマにも言及しています。
ところどころに調査の結果、事例、専門用語の解説などが加えられており、理解を深められるように工夫されています。
個人的には、子ども達が遊びを通して社会性を獲得していく話や、一般的には良くないこととして処理されがちな仲間同士での葛藤から多くの学習をしているという話は、特に興味深く読ませていただきました。
研究書としての側面から書かれているので実用書とは異なりますが、子どもと関わる様々な立場の方々に参考になる知識が多くつまっている本だと思います。
子どもの社会性の発達について詳しく知りたい方には、特におすすめする本です。
2006年11月15日
「少年犯罪の深層−家裁調査官の視点から」

少年犯罪の深層―家裁調査官の視点から
著者:藤川 洋子
出版:筑摩書房 (2005/05)
メディアの一面的な報道では、少年・少女達のことを現実的に感じることはできず、「本当のところどうなんだろう?」という疑問からこの本を読み始めてみました。
はじめは、「抽象的な犯罪社会学・犯罪心理学の理論ばかりが書かれている本かな〜!」と思ったのですが、さすが現場で家庭裁判所調査官をしている著者が書いているだけあって、具体的な事件の事例が詳細に述べられており、イメージを深めながら読むことができました。
なかなか表にだって発言することの難しい家庭裁判所調査官の仕事の様子を垣間見ることができ、とても貴重な知見を得ることができたと思います。
将来、家庭裁判所調査官になりたいという人にも良い本だと思います。少年・少女の非行を考える場合、生物的要因、心理的要因、社会・文化的要因の3つの要因から主に考察されます。
従来は、何かと「親の愛情不足・育児能力の欠如」に帰属されがちだったようですが、最近は、科学の進展に伴い脳科学や神経心理学などの側面から生物的要因がきちんと捉えられるようになってきたようです。後半に書かれていた少年犯罪に関する統計の読み解きは、とても勉強になりました。統計の落とし穴に多くの人がはまっている現状がよくわかりました。
「子どもが凶暴化している」という根拠のない言葉が一人歩きして、子どもに対して疑心暗鬼の大人が増え、子どもの社会的孤立が一層深まっている現代において、この本は、「子ども」や「青少年」について正しい認識を深めることの重要性を改めて感じさせてくれました。
2006年11月12日
「学習と教育の心理学」
学習と教育の心理学
著者:市川 伸一
出版:岩波書店 (1995/07)
これまでの「教育心理学」に関するテキストは、著名な動機づけに関する実験や学習に関する理論的な話が中心で具体的な教育実践場面とのつながりが見えにくく、心理学を専門的に勉強している人を対象に書かれていたものが多かったとように感じます。
この本は、教育心理学の研究・理論と教育実践場面での問題がいかに結びつくかを随所に示している点だと思います。
研究と実践の視点がバランスよく書かれ、「教育心理学」の基礎的な知識を網羅的に学ぶことができます。
また、近年、人間の情報処理の過程を研究する「認知心理学」の視点を盛り込み、学習者の心理過程を詳しく解説しています。
後半には、「個に応じた教育と自己学習力」、「授業と学級のはたらき」、「教育における測定と評価」などの章は、特にこれまでの「教育心理」のテキストには、見られなかった点だと思います。
とてもわかりやすく読みやすいテキストで心理学の知識を有してなくても十分読むことができます。
(専門用語については、ちゃんと説明されています。)
現在、教育に関わられている方やこれから教育に関わっていこうとしている方にオススメです。
2006年11月02日
「教師をめざす人のための青年心理学」

教師をめざす人のための青年心理学
監修:齋藤憲司
編著:伊藤直樹
出版:学陽書房 (2006/04)
この本では、これまで入門書として取り上げられることの少なかった思春期・青年期にクローズアップしています。
厳密には定義しにくいのですが、だいたい中学生〜大学生くらいまでの世代についての話です。
「教師をめざす人のための」ということで随所に教師・教師にこれからなる人向けにこれまで学生相談などのカウンセリングに長きにわたって携わってきた先生方からのアドバイスが書かれていました。
心理学の専門用語は少なく、出てきたとしてもわかりやすい言葉で解説されているので 心理学のことを全く知らなくても十分理解できる本です。
教師を念頭に書かれている本ですが、親や子どもに関わる仕事をしている方が思春期の子どもを理解しようとする際にとても有用な本だと思います。
途中で青年期に関する様々な調査データや事例が入っていて、参考になりました。
調査データを追っていくと世間一般に言われる思春期とは異なる部分もあり、勉強になりました。
後半には、青年期特有の「こころの問題」(不適応症状)について代表的なものにふれられていて、「こころの問題」に関する予備知識を身につけることができました。
青年期の子ども達に関わるうえでの入門書として良い本です。
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