2008年03月13日

「下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち」


 最近、「下流」に関する本をよく見かけます。この本は、教育関係の方にすすめられて読み始めた本です。なかなか出口の見えない教育の話ですが、この本は、これまでに読んできた本とは、異なる新しい視点を与えてくれる本でした。本を開くとすぐに東京大学教育学部の佐藤学さんの「学びからの逃走」という言葉が紹介されていました。エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」という本は、かなり著名な本で目からのウロコの本でしたが、「『学びからの逃走』って意図的に学びから逃げているの?」とビックリしました。「教育を受ける権利」は、世界には教育を受けることができない子どもたちがたくさんいる中でとても大切な権利だと思っていましたが・・・。

 生まれてからすぐに消費主体として育ち、教育サービスの買い手として成長し、等価交換を要求するようになっていく子どもたちの話は、なんとも言葉にならない気持ちになりました。教育と社会構造は、切っても切れない関係にあるので、さらに問題は根深い。経済的合理性が教育に入り込むことによって、多くの弊害が生み出されてる現状にどのように変化を起こしていくか非常に難しい課題を突きつけられた気がします。子どもと関わるより様々な分野の人からこの本を読んだ感想を聞いてみたいと思いました。
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2008年03月03日

「赤ちゃんはどこまで人間なのか 心の理解の起源」


 「赤ちゃんは、無力で白紙の状態で生まれてくる」という考え方は、一昔前の話。今では赤ちゃんが生まれながらにして持っているたくさんの力が科学的に明らかにされてきています。生まれてきた社会に適応していくために持っている能力というのは、実に興味深いです。この本では、赤ちゃんの心がどのように作られていくのか?そして、大人が感じたり、考えたりする方法がなぜこのようになっているのかについて、主に進化心理学的な視点から解説されていました。

 実際に読んでみて、「赤ちゃん」の話というよりは、もっと人間の根源的な部分について、アカデミックに解説された本というイメージを持ちました。特に興味深いのは、とりあげられているトピックが非常におもしろいものばかり!「芸術とは何か?」という部分では、「贋作の何が悪いのか?」という部分があるのですが、言われてみれば確かに本物を求める理由を論理的に考えてみるとわからない・・・。他にも、「善と悪」についてなど道徳や共感性というものがどのように身につけられていくものなのか解説されています。学際的な多様な知見から述べられておりとても説得力のある本でした。子どもに関する取り組みをしている人には、興味深い話が多いと思います。
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2008年01月26日

「社会で子どもを育てる―子育て支援都市トロントの発想 」

 子育ては家庭の問題だけでなく、社会的な基盤があってこそなされるものです。日本は、一昔前までは、ごく自然にそのような基盤が成立していたことを象徴する言葉に「親はなくても子は育つ」という言葉があります。最近は、めっきり聞かない言葉かもしれません。本書では、子育て都市として、発展してきたカナダのトロントでの取り組みについて、網羅的に説明されており、大変参考になった一冊です。今すぐにでもはじめたい取り組みが多数取り上げられていました。

 臨床心理士である著者がソーシャルワークの重要性を何度も強調しておりますが、私自信もとても共感しています。特に昨今、専門分野が高度化し、それを橋渡しするコーディネーターが日本においても必要不可欠だと感じます。自分の地域に気軽に会話のできるコーディネーターが存在していたら、整備が進む専門機関の効果も飛躍的に伸びていくのではないでしょうか?

 「マイクロレベル」→「メゾレベル」→「マクロレベル」という全体を見通し、行動していくソーシャルワークの視点こそ、正に日本における地域精神保健の分野において、大変重要なものだと思います。「ゴールは、ソーシャルチェンジ(社会変革)を起こしいくことだ。」という姿勢が何よりも見習いたいところです。対処療法的な行動にとどまらず、予防的な視点で取り組みをすることの必要性をとても実感させてくれました。
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2007年06月25日

「子どもの豊かな育ちと地域支援」

 「地域の教育力」という言葉は、近年の教育改革の合い言葉のように指摘されている言葉です。子どもの社会教育について考えるうえでとても重要な視点ですが、感覚的なイメージばかりであまりはっきりとわからない言葉でもあります。子どもや青少年の現状について論じる際に、メディアなどでは、子どもや青少年自身のことについてばかりが取り上げられることが多く見受けられますが、社会全体の大きなうねりと共に日常生活の営んでいる地域の現状について考えることは欠かせない要素です。

 この本では、冒頭に子どもの育つ環境の現状について、多様な視点から述べられています。特に「子育ち学」という視点が紹介されており、私自身もそのような学問があることをはじめて知りました。学際的な学問であり、実践学であることや臨床学であることが重要だと考えられているようです。興味や関心がある方は、「子育ち学へのアプローチ―社会教育・福祉・文化実践が織りなすプリズム」も参考にされると良いと思います。

 第U部では、「地域の子ども施設の新しい動き」、「子育ち・子育て支援の多様な展開」、「子ども・おとな参画の地域・学校づくり」、「子どもの豊かな育ちと地域支援に向けて」という大きく4つの視点から21にも及ぶ実践事例が紹介されています。どのような取り組みであったかということを紹介するだけではなく、実践と通しての課題など参考になる情報がいくつもありました。全国的な状況がこれだけまとめられている本もそう多くないので、勉強になりました。2007年の今も続いている取り組みとなっているかどうかぜひ、調べてみたいと思います。
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2007年05月05日

「いま、子どもの放課後はどうなっているのか」

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いま、子どもの放課後はどうなっているのか
編集:深谷 昌志、高旗 正人、深谷 和子
出版:北大路書房 (2006/05)

 この本は、日本子ども社会学会が中心となって2004年の冬と秋の2度に渡って実施された「子どもの放課後全国調査」の結果とそれに対する考察がまとめられたものです。子どもに関する調査は、これまで主にライフスタイル、生活価値規範意識、学校観・教師観に関するものが多く実施されてきました。しかしながら、子ども達の放課後について中心的に扱った実態調査はあまりおこなわれていません。放課後は、子ども達の生活を映し出すうえでとても重要な時間だと思います。

 この調査は、小学5・6年生を対象に全国16地点で行われています。当然、季節や地域によって大きく影響を受けますのでその点についても細かく対応されています。近年、実施された子どもの調査の中でもとても貴重なデータが集められています。

 調査の結果を読んでみて、子ども達のライフスタイルの実態についても様々な面で考えさせられましたが、特に「幸福感」に関する部分や仲間集団との関係性については、大変印象的でした。頭の中に思い描いていたものが整理された気がしました。普段、子ども達と接していて思うことと調査結果とが一致する部分がいくつかあり、大変勉強になりました。子どもに関わる活動をされている方には、ぜひ、一読いただきたい一冊です。

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2007年03月07日

「少年サバイバル・ノート ― 家族の中で「生き抜く」ために 」

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少年サバイバル・ノート
― 家族の中で「生き抜く」ために ―
著者:西山 明
出版:集英社 (2000/08) 

 なんとも印象的な題名で思わず手に取りました。共同通信社の社会部記者として、長年、教育や家族に関する取材を続けられてきた西山さんが長年続けてきた少年や少女との対話を整理し、「なぜ、子どもにとって生きにくい」社会になってしまったかを考察している本です。西山さんが取材をしてきた子ども達の中には、登校、学級崩壊、引きこもり、カルト宗教、自殺など様々な問題に直面した子ども達が描かれていました。それは、現代社会や家族という不可解な海を懸命に泳いでいる姿を描いているようにも感じました。ひとつひとつの物語は、けして遠いどこかの国の話ではなく、今、目の前にあるこの国で起こっていること。深く胸に突き刺さる話でありながら、どこか身近に共感できる部分がありました。

 家族や社会というとても大きな存在に対して、経済的な力も社会的なスキルもない子ども達の解決手段は限られており、日常から離脱した世界へと脱出口を見いだしていくという言葉には、最近の繰り返される悲しすぎるニュースの鍵が眠っているようにも感じました。子ども達の問題行動を異質なものと決めつけるのではなく、その胸の内を真剣に考え、読み解いていくことの大切さをこの本を通して改めて感じさせられました。
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2006年09月24日

「他人を見下す若者たち」

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他人を見下す若者たち
著者:速水 敏彦
出版:講談社 (2006/02)

 帯のところの「『自分以外はバカ』の時代!」という言葉で思わず手にとってみて開いてみると名古屋大の速水先生のご本でした。
教育心理学者である速水先生の視点からの仮説がこの本の柱になっていました。仮説というだけにまだまだ研究途中で実証的なデータが集めまりきっていないようでしたが、論だけではなくきちんといくつかの外部のデータや現段階でのデータを紹介していて、説得力のある本でした。とはいっても私もまだ若者の部類に入ると思うので疑って読みはじめました。

 

 でも、昨今のニュースで見る事件や自分の身の回りについて考えてみると否定しきれない点もちらほら・・・。「仮想的有能感」という言葉がこの本のキーワードです。人間は、生きていくうえで誰しもが無意識に自尊心と維持したり、高めようとしていることに関しては、心理学者だけでなく、多くの学際的分野であきらかにされてきました。問題なのは、その自尊心をどのように維持したり、高めようとするのか?ということです。「現代の若者は、自分の対面を保つために、周囲の見知らぬ他者の能力と実力をいとも簡単に否定する。そのような他者軽視をすることで、彼らは自分の肯定感を獲得することが可能となる。」というのがこの本の柱になっています。また、怒りは表出するが、その他の感情を貧困化させている子ども達の現状や仮想的有能感を生み出す社会的背景、日本人の心が今後どうなっていくのか?という話しなどとても興味深く読むことができました。
 

 最後にその解決のためにどんなことが必要か?ということに触れられていましたが、 夢職人の活動が今、やっぱり重要なことなんだと改めて思いました。電車に乗っている間に簡単に読める文庫本なのでぜひ、気軽に読んでみて下さい!
心理学、社会学、教育学を学んでいる学生さんは、非常にわかりやすい仮説実証型の研究ですので自分の研究に活かせる点も多くあると思います。

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2006年09月14日

「居場所づくりと社会つながり」

1990年代頃から不登校の増加するようになり、学校外の子どもや若者の「居場所」が求められるようになってきました。
文部科学省も近年になってから多額の予算をつけて「子どもの居場所づくり」事業をはじめるようになりました。
「『子どもの居場所』とは何か?」という問題提起は、とても重要な問いかけです。
この本は、環境心理学者・発達心理学者であるRoger A. Hart氏の著作(子どもの参画―コミュニティづくりと身近な環境ケアへの参画のための理論と実際)
を基に、「参画」・「居場所」・「社会つながり」というキーワードを挙げ、具体的な実践事例を通してその意義と問題点を探るものです。
主に4つの事例が検討されていました。

◆ 「ミニさくら(千葉県佐倉市)
→ 世界的な有名なドイツで20年以上も行われている「遊びのまち ミニミュンヘン」(子ども達が好きな仕事を選んで働き、稼いだ給料を自由に使い、市議会や選挙なども行う)を基に佐倉市での実現するまでの取り組みやその問題点について。

◆ 「冒険遊び場」 (NPO法人 日本冒険遊び場づくり協会
→ 子どもの遊びや遊び場を充実させることで子どもが豊かに育つ環境をつくろうという取り組みについて。「国分寺市プレイステーション」の運営や「遊び場子ども会議」などの様子を詳細に報告しています。

◆ 「文化学習センター」 (NPO法人 文化学習協同ネットワーク
→ 東京都三鷹市の文化学習センターの若者の居場所に関連する様々な活動の展開について、はじまりからその経緯を詳しく述べ、子ども達の成長の様子も克明に描いていています。

◆  「ストリートダンス体験と居場所・参画」 (野本 和義さん
→ 現代に生きる青年がストリートダンスと出会い、進路選択での悩み、フリーターという社会の繋がり方について、自分の心情を振り返り、「居場所」について解釈を加えていています。

どの事例もひとつひとつが異なる色の「居場所」を描きながら、どこか共通している要素を感じます。
Roger A. Hart氏の考える理論を学んだ後に実践事例として読むこともできますが、前に一読してみてもおもしろいと思います。
特に若者のインタビューをそのまま掲載しているところが他にはなく、率直で心に響くものがありました。
「NPOなんて知らない!」という人もこんな取り組みがあるのか〜!と感じていただける本だと思います。

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2006年08月21日

「子どもの社会力」

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「子どもの社会力」
著者: 門脇 厚司
出版: 岩波書店(1999/12)

この本をはじめて読んだ時、自分の目指しているものを後押ししていただいたような気持ちになりました。
本屋で「子どもの社会力 −失われていないか 人と人がつながる力 社会をつくる力−」ととってもインパクトのある字で書かれていて思わず即買った本です。
社会教育関係者はもちろんですが、教育や心理、福祉など子どもに関するお仕事をされている方にぜひ、読んでもらいたい一冊だな〜!と思いました。
間違いなく夢職人の活動におけるコンパスになった一冊です。
 
 近年の子ども達をめぐる深刻な状況の根本的な原因として「社会力」を挙げ、その重要性についてわかりやすく解説しています。
「社会性」という言葉はとてもよく使われる耳慣れた言葉ですが、教育社会学者の門脇さんがこの本で述べている「社会力」という言葉は、異なる定義を持っています。 
「社会力」を築く基礎となる他者への愛着・関心・信頼がなぜ現代の中で育まれにくくなっているのかなど社会学的な視点からしっかりと述べられていました。
また、「社会力」の向上に地域社会における教育がキーとなっていることが説得力のある言葉で書かれていました。
「教育=学校」というイメージが強すぎ、何か問題があると学校が叩かれてしまう時代ですが、地域社会にしかできない教育があります。
地域の教育力」という言葉が最近、よく取り上げられるようになってきましたが、「なんのこっちゃ?」という方も多いはず。
具体例を挙げながら、その点についてもわかりやすく説明されていました。
posted by 特定非営利活動(NPO)法人 夢職人 at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 子ども / 青少年